美しいひと

美しいひと

店を始めて気づいたことの一つが、世の中には美しい女性がたくさんいらっしゃるんだなぁ、ということです。

 

ご来店くださるお客様を拝見していても、皆さん、ご自身の個性に合った装いがお上手で、それぞれにお綺麗。着物を召した方も珍しくなく、清楚に、粋に、持ち味を活かした着こなしが素敵です。

 

ここ寺町界隈は若いファミリーが多く住まわれている地域で、ベビーカーを押しながらご来店くださるママの姿も。子供さん共々にファッショナブルで、雑誌から抜け出たようだと思うことしばしばです。

 

店の中からガラス戸越しに通りを行き交うひとを眺めながら、京都には美しい女性が似合うなぁ、なんて思います。

 

事業をされている女性に会う機会も増えました。意識の高い女性は美意識も高く、自身を魅せる能力にも長けておられます。学ぶことが多く、いつも眩しく眺めています。

 

女性の数だけ美しさがあるなぁと思います。

 

そういう 私はというと…。学生の頃からいつも友達の引き立て役ばかりしていたような。そこへ男性が近づいてきたなら、疎まれる前に一人その場を離れる、なんてタイプでした。美人を見ると、まわりから綺麗、綺麗と言われて生きる人生ってどんなんだろうと妄想してしまいます(笑)。

 

女性の美しさは、他人事に語るには気楽ですが、自分のこととなると厄介です。

 

どんなに痩せても、自分は太っていると拒食をやめない女性がいるとか。他人にとっては取るに足らないこと、むしろチャームポイントに思えることが、本人にとっては大きなコンプレックスであることも。

 

過度なうぬぼれはよくありませんが、自分を卑下しすぎるのもよくない。けれど、そもそも自分の容貌を客観視することなど、土台無理な話です。

 

女性が美しく装って街を歩けることは、なによりの平和の証、素晴らしいことです。さらにアンチエイジング流行りの今、お金と時間があれば誰でも何割増しかで綺麗になることも可能、女性にとって恵まれた時代です。

 

そもそも女性の美しさってなんなんだろう、と迷ってしまうことも。

  

「あなたが思う美しいひとは?」と聞かれたら、私が一番に思い浮かべる女性がひとり、横田早紀江さん、北朝鮮の拉致被害者、横田めぐみさんのお母様です。想像を絶する苦悩の日々を長きにわたって送られていることは周知の通りです。

 

そんななかにあってなお、常にそこはかとなく漂う気品。恨みつらみで表情を歪めることなく、揺るがない美しさ…。それらはどこからくるんだろう。支えているものはなんなんだろう。テレビで拝見するたびに考えます。

 

最近、お孫さんと面会された由。会見で見せられた笑顔はいつにも増して美しいものでした。近い将来、めぐみさんとの再会も叶うことを願ってやみません。その時に見せられる笑顔はまたどんなに美しいことでしょう。

 

様々なことは天からの授かりものと思うこのごろ、容貌も例外ではありません。人と比較して羨んだり、ないものねだりじゃなく、ありのままを認めてみる。そこからしか始まらないことがあるような。

 

自分なりの魅力、年齢相応の美しさ、そういうものを目指して生きていきたいなぁ。努力は怠れないけれど、抗い過ぎず。そうして、容貌だけでなく、丸ごとの自分を認められるようになりたい。

 

そんなことを思う年度末です。

 

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足し算人生

足し算人生

3月16日、「しののめ寺町」は2周年を迎えることができました。ひとえに皆様のご愛顧、ご支援のお陰です。ありがとうございます。

 

1周年にご近所の洋菓子店「シェ・ラ・メール」様のご協力を得て誕生したオリジナル菓子【山椒メレンゲ】も一歳になりました。

 

ひとが年齢を重ねるのを喜ばしく思うのは何歳くらいまででしょうか。あぁ○歳になったと喜び、あれが出来るようになった、こんなことがわかるようになったと、積み上げられていくものを数えては褒め称える…。そんな期間は思いのほか短いように思います。

 

ある時期を過ぎると、もう○歳になってしまったと嘆き、平均寿命から重ねてきた年数を引いてみたり。出来ることより、出来なくなっていくことをあげつらい、成熟を衰えと見なす…。いつからか足し算でなく引き算の発想になってしまうように思います。

 

仕方ないことと言えば仕方ないことですが、あまりにさみし過ぎるような。なかでも女性が年齢を重ねることへの世間の冷たさ、それに対する女性自身の怯えは相当なものと思われます。(笑)

 

これが店となると全く違ってくるから不思議です。年数を重ねることがすなわち店の価値となります。京都には100年単位で続く老舗がたくさんありますが、その風格はまさに年数の重みそのまま、朽ちた看板は美しくさえあります。

 

店を開き、変わったことは数えきれないくらいありますが、変わったことすべての基本にあるのは、「引き算」から「足し算」へ発想が転換したことかもしれません。-(マイナス)から+(プラス)へ。心のベクトルが180度転換しました。

 

もともと家業に携わっていなかった私は、この「しののめ寺町」がスタートライン、2年前の3月16日、まさにゼロからの出発でした。引き算する余地などもとよりなく、足し算していくことでしか生きていく術がなかったように思います。

 

赤ん坊が親の見よう見まねで学習していくように、小学生が先生から「あいうえお」を教わるように、ただただ学ぶことの連続でした。自分の両手で出来ること、自分の足で行ける場所、自分の言葉で伝えられる思い、そうしたことを探すことの繰り返しでした。

 

そうこうしながら店の歴史が一年一年積み重ねられていく。馴染みのお客様がおひとりおひとり増えていく。知人の知人がまた知人になっていく。足し算、足し算、また足し算…。店の経営状況はというと…、こちらはまだまだそうはいきませんが(汗)。

 

知らなかったことを知っていく、出来なかったことが出来ていく、そうした過程は幼児期の成長と同じく楽しいものです。いくつになってもこの楽しさを味わえるのは、なににも勝る贅沢だと思います。この間のどんなしんどさも、支えてくれたのはこの悦びだったかもしれません。

 

もちろん今も進行形、まだまだ足していかないといけないことばかり。少しでも長く、少しでもたくさん、足し算を続けていきたいものです。

 

とはいえ…、引き算が必要なときが、やっぱり、いつか、来るでしょう。そのときはそのとき、今しばらくは足し算人生でいきたいと思います。

 

今年は特に企画は考えておりませんが、心新たに進んでいく所存です。改めまして、これからもどうぞよろしくお願い申し上げます。

 

 

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希少難病患者支援事務局SORD(ソルド)2

副代表理事、中岡亜希さんと

前回のブログ希少難病患者支援事務局SORD(ソルド)でご案内しました3月1日(土)のイベントが無事終了しました。遅くなりましたが、ご報告を。

 

大がかりなイベント、初めての試み、SORDさんにとって大変だったことは想像するまでもありません。それでも多くのボランティアの方の協力を得て、成功裏に終わったようです。本当にお疲れ様でした。

 

こうした出店は「しののめ寺町」にとっても初めてのことでした。なにぶん手作りの商品、しかも家族だけでやっている店です。無理は承知のうえ、私のたっての希望で実現した経緯は、前回のブログに書いた通りです。

 

数日前からイベントのこと、留守にする店のこと、あれこれ気になることばかり。当日、会場で設営を終えた時には、実のところ疲労困憊でした。それでもお客様の姿を見ればシャキッとするのは、店にいる時と同じです(笑)。

 

なにぶん馴染みのうすいイベント、ごった返すほどの来場者とはいきません。通りかかられるお一人お一人に味見をしていただくよう笑顔でお声かけ。長テーブルに絹の風呂敷を掛け、塗り盆にじゃこ山椒と塩昆布を陳列。写真や和紙で作ったポップなど、それなりに用意したつもりでした。けれど…、

 

全く伝えられていない。

 

寺町という風情ある街に店を構え、立地や店の佇まい、様々なものの力に助けられて商品を売っているのだということがよくわかりました。立ち止まり、お買い上げいただいたときの有り難さ。日々わかっているつもりでしたが、改めて身に沁みました。

 

私と同じように事務局長、香取久之氏の講演を聞いた知人がたくさんご来場、「しののめ寺町」のブースにも立ち寄ってくださいました。正直のところ、売り上げの大半は知人による所がほとんどです。ここでもまた改めて知人の有り難さを知ることとなりました。

 

病気や様々なハンディキャップをもつご本人、あるいは子供さんを抱えたお母さんと出会いました。話し込むうちに涙ぐんでしまうことも。年長の出店仲間の方からは商売の極意を教わったり。人の流れを見送りながら、商売の基本中の基本であるマーケティングやブランディングについて考えたり。

 

香取氏は仰いました。希少難病はマイノリティ(少数派)、存在すら気付かれないこともあると。けれど、この会場では少数派と言われる方たちが多数派でした。エネルギッシュに存在感を放っておられました。多数派と少数派など簡単に入れ替わるものなのだとわかりました。

 

店ではお客様と接しますが、このイベントでは少しではありますが社会と接しられたような。また一枚、新しい扉が開きました。

 

箱入り娘ならぬ、箱入りにわか女将が初めて店を飛び出し、初めての場所に立ち、あれこれ思い、感じ、考えた一日でした。畏れ多い例えで恐縮ですが、道に立つ托鉢の僧の思い。きつい面もありましたが、そこに身を置かなければ気づけなかったことに、たくさん気づかされました。

 

とても長い一日でした。たった一日で、一年分の経験をした気がしています。

 

様々なことがありましたが、会場の空気は終始、温かく優しいものでした。最後に思いました。私はこの場にいたかったんだと。この時間を共有したかったんだと。無理を押してでも出店を決めた自分の選択に、自分で腑に落ちました。

 

この機会を与えてくださった全ての巡り合せに感謝申し上げます。

 

写真は副代表理事の中岡亜希さんと一緒に撮っていただいたものです。私が魅了されたはち切れんばかりの笑顔を、ぜひ皆さんにも。

 

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