書くひと 書かれるひと

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紹介コーナーでも載せていますが、ただ今発売の雑誌「まっぷる歩く京都」で「しののめ寺町」が掲載されています。

 

少しずつですが、こうした取材を受ける機会が増えてきました。通常、カメラマンさんとライターさんの二人で来られるのが基本でしょうか。この時は若い女性のコンビでした。ライターさんが、私たちの話を一所懸命書きとめられていた姿が印象的でした。

 

というのも…、実は私、数年前に一度だけこうしたライターの仕事をさせてもらったことがあるんです。情報雑誌のラーメン店特集で、ラーメン屋さんを取材して記事を書くというものでした。

 

ラーメン店の店主といえば頑固一徹、こちらの対応が気に食わなければ怒鳴りつけられるだの、ラーメン店の取材が出来たら、あとはどんな店でも大丈夫だの、事前にずいぶん脅されました。それでも、めったにできない経験と思い、興味津々で引き受けたのでした。

 

一番初めに訪ねたのは、かなりの老舗店です。頑固親父に「とりあえず食ってみろ」なんて言われる場合も想定して、空腹で出かけたのですが、待っておられたのは結構高齢の女性でした。カウンターに出されたのはラーメンならぬアイスコーヒー、ちょっと拍子抜けし、そしてホッとしたのを覚えています。

 

雑誌の発売前だったか、直後だったか、この店の前を通りかかると、違う店名のラーメン屋さんに変わっていました。取材時に雑誌の発売予定日を聞かれ、数ヶ月先の予定であることを伝えると、「もっと早、出たらええのになぁ」とポツリと漏らされた女将さんの言葉が、妙に心に引っかかっていました。廃業に至る事情は知る由もありませんが、商売の厳しさを思い知らされた、とてもショックな出来事でした。

 

次に訪ねたのは、料理人さんが独立して始められたという店でした。確かにそんな風情のご主人で、繁忙時間が過ぎ、奥様らしき方が自転車で帰っていかれるところでした。パートさんを雇うより、そりゃあ奥様頼みだろうな、なんて思いながら後ろ姿を見送ったのですが、まさか数年後、自分も似たような立場になるとは想像もしませんでした。こちらの店は今も健在で、通りかかるたびにご夫婦のことを思い出します。

 

幸い大きなトラブルなく十数件の取材を終えました。そのなかで得た情報をもとに、個々の店の良さを精一杯表現する作業は楽しいものでした。少しずつでもこの仕事を続けられたらいいなと思いましたが、そんな甘い世界ではなかったよう。一度きりの思い出で終わってしまいました。

 

書く側の仕事は叶いませんでしたが、気づけば、書かれる側の仕事をするようになっていました。本当に先のことはわからないものです。いずれにせよ、どちらも厳しい仕事です。

 

うちに取材に来てくださった方たちに、いつまでも安心してもらえるような店でありたい。一度きりでもライターの経験のある私は、切にそう願います。